背景
電動シリンダにかかる押付力や負荷は、最終的にボールねじと軸受への軸方向力として現れます。圧入、締結、プレスのように押付力そのものが品質を左右する工程では、この力の把握が欠かせません。摩耗や潤滑状態の変化が最初に現れるのも、この力です。
一方で、量産機への力センサーの搭載は、コストと設置スペースの制約から現実的ではありません。試験機では測定できても、稼働中の設備では把握できない。これが多くの現場の実情です。代わりにモータ電流が目安として用いられますが、電流が対応するのはあくまでトルクであり、軸方向力との間には機構の慣性と弾性が介在します。単純な比例関係で読み替えられる量ではありません。
検証した内容
弊社は、サーボアンプが標準で取得している信号のみを入力として、軸方向力を推定するモデルを構築しました。入力はモータの各相電流、有効電流、および速度で、センサーの追加は行っていません。モデルには、弊社が各案件で用いている軽量な機械学習手法(リザバーコンピューティング)を採用しています。
検証には、電動シリンダを故障に至るまで連続運転し、全期間のセンサー記録を収めた公開データセットを用いました。同型の電動シリンダ3台に同一の手順を適用しています。学習に用いたのは各シリンダの寿命初期の区間のみで、複数台のデータを混在させた学習は行っていません。精度の評価は、学習にもパラメータ調整にも用いていない別区間で実施しました。
確認できたこと
学習に用いていない区間においても、軸方向力の波形を再現できました。この結果は3台すべてで同水準であり、力センサーを組み込むことなく、この量を把握できることを示しています。
この構成に必要なモデルは1キロバイトに満たず、既存のコントローラ上でそのまま動作します。GPUもクラウド接続も必要としません。
貴社の設備でも応用できるかもしれません
押付力や負荷が品質・設備寿命に直結する一方で、力センサーの設置が現実的でない。そうした状況であれば、本アプローチは検討に値するかもしれません。電動シリンダ、電動プレス、圧入・締結工程、搬送軸や位置決め軸などが該当します。必要な信号は、貴社のサーボアンプがすでに出力しているものです。貴社のケースで成立するかどうかは、短いお打ち合わせ1回でおおよそ判断できます。
なお、運動指令では説明のつかない力の成分を抽出するという逆方向のアプローチは、サーボ軸のトルク推定のページでご紹介しています。